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40代からのロック再発見

キャッチ一筋30年!チープ・トリックの魅力
by 舩曳将仁

チープ・トリックといえば、「キャーキャー」と黄色い声援を送る女性ファンの姿をリアルタイムで見ていた世代には、「ミーハーなアイドル・バンドだろ?」と、良いイメージを持たれていないように思う。その気持ちもわかるけれど、それだけの理由でチープ・トリックを聴かないのは、あまりにもったいない!新作『ロックフォード』の発売にあわせて、06年6月21日に初期作品6タイトルが再発されたチープ・トリックを紹介したい。

彼らはポッと出てきたアイドル・バンドどころか、デビューした時にはすでに十年選手だった。ギターのリック・ニールセンとベースのトム・ピーターソンが、グリム・リーパーズというバンドを結成したのは1960年代後半のこと。彼らはフューズと改名し、1969年に1枚のアルバムを発表する。続いてシック・マン・オブ・ヨーロッパと改名して、ヨーロッパ・ツアーも経験している。地元のロックフォードで地道な活動を続けていた1973年、リックとトムの元にドラムのバン・E・カルロスが合流してチープ・トリックを名乗った。すぐにヴォーカルがランディ・ホーガンからロビン・ザンダーに交代し、ここに黄金のラインナップが誕生する。さらにデビューまでの約3年間、彼らは地元を中心に精力的なライヴ活動を行っており、ライヴ・バンドとしても鍛え上げていった。ジャック・ダグラスが『チープ・トリック』のプロデュースを引き受けたのも、彼らのライヴを実際に目にして、その実力を高く評価したからだと言われている。こうして、ようやく1977年にデビューを果たす。

チープ・トリックのメンバーは、多感な十代の頃にブリティッシュ・インヴェイジョンを体現している。その意味ではエアロスミスやキッスと出発点は同じだが、彼らがヤードバーズやローリング・ストーンズなども好きだったのに対し、チープ・トリックは初期のビートルズをはじめとしたポップ・バンドの、とびきりキャッチーなメロディにやられた。ちなみに、チープ・トリックが1980年に発売したEPでは、ビートルズの「デイ・トリッパー」をカヴァーしている。

そんなブリティッシュ・ポップ勢のなかでも、彼らの大のお気に入りがロイ・ウッド。これまでにも、『天国の罠』でザ・ムーヴの「カリフォルニア・マン」、1990年の『バステッド』ではウィザードの「ウィ・アー・ゴナ・ロックンロール・トゥナイト」をカヴァーしている。よりによってその2曲を選ぶところにも、「キャッチーなメロディを、ストレートなロック・サウンドに乗せて、コンパクトに伝える」というチープ・トリックの魅力の根っこが見えている。

コンパクトな楽曲というところが、「シングル・ヒットを狙うバンド」というイメージを持たれる原因にもなっているが、いやいや、キャッチーなメロディの魅力を最大限に引き立たせようと思えば、コンパクトな楽曲こそ理想であり、彼らがブリティッシュ・インヴェイジョンから学んだことも、その方法論だったといえる。それは、最新作『ロックフォード』でも、まったく揺らぎがない。キャッチーなパワー・ポップ一筋30年!と聞けば、彼らに対する印象も違ってくるのでは?

「ミーハー」とか、「アイドル・バンド」とか、そういう先入観は横に置いといて、彼らがこだわり続ける痛快なパワー・ポップを再発見してみてください。意外にも、「キャーキャー」言っちゃうかも?!


では、簡単に、今回の再発アイテムを紹介しよう。 『チープ・トリック』は、1977年発表のデビュー作。彼らを見出したジャック・ダグラスのプロデュース。歯切れの良いロック・ナンバーで畳み掛ける彼らの原点といえる。2作目に収録される「甘い罠」の初期ヴァージョンや、アウトテイク「ラヴィン・マネー」、未発表曲など5曲がボーナス・トラックとして収録されている。

『蒼ざめたハイウェイ』は、日本で大ヒットを記録した2作目。よりコンパクトな作りで、純粋にメロディの良さを追求している。前作以上にキュートなメロディの宝庫だ。ロビンとトムの美形が表ジャケットを、リックとバンの三枚目が裏ジャケットを、というコミカルなキャラクター設定は本作から強調されるようになった。未発表デモなど5曲のボーナスを収録。

『天国の罠』は、1978年発表の3作目。日本ではアイドル的人気が爆発しており、本作の発売と同時期に行われた初来日公演で武道館の舞台を踏むという快挙を達成。当然、本作も日本でヒットを記録した。「サレンダー」は、ロック・ファンなら一度は聴いたことがあるはず。ザ・ムーヴ「カリフォルニア・マン」のカヴァーは本作に収録。「サレンダー」と「スティッフ・コンペティション」の未発表アウトテイク2曲をボーナス収録。

ここまでの3タイトルは、1998年に発売されたエクスパンデッド・エディションがマスターに使用されている。

『at武道館』は1978年に日本先行で発売されたライヴ・アルバム。アメリカでは翌1979年に発売され、チープ・トリックと武道館の名前がアメリカ中に知れ渡ることとなった。1993年には、同公演のアウトテイクを収録した『at武道館II』が発売されている。また、1998年には本作と『II』をあわせて、当日のステージを完全再現した『at武道館コンプリート』も発売されている。今回の紙ジャケット再発は、オリジナルの10曲入りを再現しており、ジャケットも当時の日本オリジナル盤を再現。音源は2002年のリマスター音源を使用している。

ここまでの1作目から4作目までは既に紙ジャケットで再発済み。しかし、今回はよりディテールにこだわっての紙ジャケット再現というから、なんともファン泣かせだ。

そして、今回新たに紙ジャケット再発に加えられたのが、『ドリーム・ポリス』と『オール・シュック・アップ』の2枚である。いずれも、2006年の最新エクスパンデッド・エディションをマスターに使用している。

『ドリーム・ポリス』は、1979年発表の5作目。軽快なタイトル・トラックやバラード「ヴォイシズ」など、彼らの魅力をギュッと詰め込んだ代表作といえる一枚。ファンクラブ入会案内のチラシと、音は出ないものの当時の日本盤LP初回盤オマケだったソノシートを縮小再現している。ちなみに、ソノシートに収録されていた「オー・ボーイ」は、『蒼ざめたハイウェイ』のボーナス・トラックになっている。収録曲のライヴ・ヴァージョンなど、4曲のボーナス・トラックを収録。

『オール・シュック・アップ』は、1980年に発表された6作目。かのジョージ・マーティンがプロデュースをつとめた話題作。アルバム発売前にトムが脱退するという事態もあったが、ヒットした「ストップ・ディス・ゲーム」や感動のバラード「ワールズ・グレイテスト・ラヴァー」など優れた曲が揃っている。「デイ・トリッパー」を収録した4曲入りEPの全曲と映画『ローディー』への提供曲の計5曲がボーナス・トラックとして収録されている。




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