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40代からのロック再発見

アル・ク−パー『ス−パー・セッション』(1968年)<その2>
by 小川真一

さて、『ス−パー・セッション』の中身を見ていこう。
マイク・ブルームフィールドのギターに先導されて、1曲目の「アルバートのシャッフル」が始まる。ブルームフィールドのギターは、ちょっとクスリ入ってるかなと思わせるほど豪放でアウトなフレーズ(音程が外れる寸前のチョーキング)が出まくり。でも、この過剰なほどの激情のほとばしりが彼の持ち味なので、これはOK。続くアル・クーパーのソロも、適度なギミックを交えながら盛り上がっていく。

それぞれのソロの後半に出てくる、ブラス・セクションに注目したい。
これはセッション後に付け加えらたもの。ジャム・セッション風のラフな演奏に、後からブラス・アレンジをオーヴァー・ダビングするという手法は、60年代のVerveレーベルなどでよく用いられたもの。例えばウエス・モンゴメリーの『柳よ泣いておくれ』なども、強引にブラス・アレンジを入れてまとめあげてしまう。それどころか、演奏の途中でテープをカットしたり、なかり悪どいものもあったりする。これじゃジャズの即興性も、名演奏も台無し。

後からブラスを入れるのは、ダラダラとしたジャム・セッションを、それなりに聞きやすいものにするワサビとしては有効ながらも、ちょっとインチキっぽい手法でもあったりする。この「アルバートのシャッフル」でのブラス・アレンジが、Verveでの一連の作品を手掛けたアレンジャー、クラウス・オーガマンのフレーズにそっくりなのは、偶然じゃないような気もしてくる。こんなところまで真似することないのにね。

このあたりを見ていくと“ロックにジャム・セッションの手法をもちこんだ革新的なアルバム”という部分の化けの皮がはがれたようにも思えてしまう。基本的には、ただのブルースのセッションだし、多少演奏時間が長いとはいっても、閃きをもったインプロヴィゼイションという評価には価しない。それでも発売当時は、「なんかワカらんけどスゴいぞ」という先入観で聞いていたような気がする。まぁ、このあたりが“ス−パー・セッション”というネーミングの効果なのかも。

それよりも、カーティス・メイフィールドの「マンズ・テンプテーション」あたりを、懸命にカヴァーしているのが微笑ましい。ク−パーはともかく、ブルームフィールドの方はそれほどの歌唱力があるワケじゃないんだけど、それでも「これが好きじゃけん、歌いたかったんよ」という気持ちが十分に伝わってくる。その熱意はさておき、こういったことは“スーパー”でもなければ“セッション”でもないんだよな。

ちなみに、アルバム4曲目に収めらた「His Holy Modal Majesty」は、「彼の様式化された神聖なる威厳」という物々しい邦題が付けられている。なんだこの邦題は、プログレじゃないんだからさぁ(笑)。ジョン・コルトレーンを意識したような6/8のシャッフルのビートで演奏され、ブルームフィールドが参加したトラックの中では一番ジャズっぽい。ただしこれも、ブルームフィールドがバター・フィールド・ブルース・バンド時代に吹き込んだ「ワーク・ソング」と同じように、しっかりとしたジャズ理論に裏付けされたプレイじゃないので、かなり覚束ない部分もある。といったワケで、贔屓目にみても“ジャズ風の演奏”の範疇を超えてないんだよなぁ。

あらためて聞き直してみて、マイク・ブルームフィールドの熱演などもあり、ブルース/R&Bのセッション・アルバムとしては聴き応えがあるアルバムだ。ただし、時代を変えたほどの名演なのかというと、それはやはり疑問。それよりも“こんな形のアルバム制作スタンスもあるじゃんね”という提案こそが、この『ス−パー・セッション』のもつ大きな意味合いだったと思う。

さて、「なんでステファン(スティーヴ)・スティルスの名前が出てこないんだ」と思われる方も多いと思う。実はこの『ス−パー・セッション』におけるスティルスは、まるっきりのオマケだったりする。

レコーディング・セッションが佳境に入ったある日、アル・クーパーがブルームフィールドが泊まっている部屋に彼を起こしに行くと、ベッドの中はもぬけの殻で誰もいない、そばには「眠れないんだ、ごめん」のメモが。つまり、ブルームフィールドは『ス−パー・セッション』の録音の真っ最中に、バックレてしまったという塩梅。

極度の緊張から不眠症にかかり逃亡してしまう、というのはこの時だけじゃなくて、69年にフィルモアで行われた“ライヴ版ス−パー・セッション”(『The Live Adventure Of Mike Bloomfield And Al Kooper』)でもおなじようなことが起こり、最終日をキャンセルしている。このフィルモアでのライヴでは、旧友のエルヴィン・ビショップが引っ張り出され代役の枠を超えた大活躍し、絶賛と少しの顰蹙を浴びた。

ともあれ、そのブルームフィールドの代役に抜擢されたのが、ステファン・スティルスなのだ。なんでブルームフィールドを徹底的に捜索せずに、すぐさま代役を探したのか、なんて疑問も生まれる。それほどアルバム・リリースの期日を迫られてたんだろうか。ブルームフィールドの復帰を待って再度録音しても良さそうに思うんだけど、そう考えると、アル・クーパーは案外、薄情なヤツだったのかも。いやそれよりも、ブルームフィールドの性格を、よくよく知り抜いていたんだろう。

そんなワケで、スティルス・セッション(アナログ盤ではB面)は、「魔女の季節」など、かなり好演が記録されているものの、本来の“ス−パー・セッション”というコンセプトからみると、ちょっと違和感がある。それよりも、ステファン・スティルスとマイク・ブルームフィールドは、スタジオで一度も顔を合わせていない、これが『ス−パー・セッション』の真実だったりするのであります。

(小川真一)

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